【組み立て】 ダーク・トルーパー&ショア・トルーパー&デス・トルーパー 1/12スケール プラモデル【レビュー】【改造】

    こんにちは、こんばんは ネコガザミです    メンタルの回復が進んだので、久々に模型制作参ります    ・ダーク・トルーパー(シャドウ・ストームトルーパー改造)    まずは、「スターウォーズ・ファクトファイル」を読んで脳を焼かれた こちらから 「グローグ...

ラベル モンスターメーカー の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル モンスターメーカー の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2026年2月27日金曜日

Monster Maker ResurrectionRPG FAN SS- Monster Makers' Conflict-第0部第0章第0話:プロローグ1-滅亡の後日譚-

  いきなり「とあるライダー世界」とクロスしています
 まだネームドではない、一般の詩人娘の物語が始まります

Monster Maker ResurrectionRPG FAN SS- Monster Makers' Conflict-

第0部第0章第0話:プロローグ1-滅亡の後日譚-

=====================================================================================

 私は、リュミール。勇士ツチラトのパーティーに所属している、吟遊詩人だ。薄い青色の髪に白い鳥の羽の飾りのついた帽子を被せ、
戦場では鼓舞する歌を、
戦いが終わったら鎮魂歌を、夜は子守唄を朝は目覚めの歌を歌うのが、私の役目。

 第四次モンスターメーカー戦争も、あの『カオニュの乱』と名付けられた戦いも終わった。一人の優しい魔女が放った炎に、世界は浄化の炎に
焼かれて。
 その代償として彼女は虚空に吸い込まれ、封印された。『大罪人』の烙印とともに。
 そして『滅亡戦争』の後の世界は光も闇も失い、『冬の時代』が来た。まるでそれは、優しい魔女を犠牲にした世界とその人々に対する、
『罰』であるかのようだった。

 それでも戦いは、終わらなかった。

 あの浄化の炎でも、すべてを浄化するには至らなかった。
 浄化の炎を逃れたのは、不浄な者たちだけではない。別世界-空の上-から来た勢力、『侵略者』と呼ばれる異邦人たちは、侵略戦争で連携していた悪魔たちが撤退した後も、
戦闘を継続していた。
 どういう理屈か、『鳥類の名前のコードネーム』を冠する幹部を持つ彼らは、滅亡戦争においても強敵だった。それでも、光のネームドや、
彼らを快く思わない闇の実力者との共闘もあって、抑え込んでいた。
 『滅亡戦争』の後の今では、悪魔との協定が崩れたおかげで、ある程度は弱体化してくれていた。代わりに、こちらも頼りのネームドの
ほとんどを失っていたおかげで、苦戦は免れなかった。

 そんな状況が今に至るまで続いていた。それでも、どうにか奴らを押し返せてはいた。しかし、今私たちの目の前にいる艦隊は
これまで相手した彼らとは桁が違った。そして今度ばかりは、非はこちら、滅びた世界に秩序をもたらすために
結成された国家『フェニキス』にあった。

 今、私たちが目の前にしているのは、知的なケンタウロス種族『フウイヌム』の国『セントーラ』だ。しかし、そこは今や滅びつつあった。
私たちの味方の一部の暴走によって。そもそも、中立を名乗っているあの国に戦争を仕掛けたこと自体、私は大間違いだと思う。ツチラトたちも
同じ意見だった。しかしそれでも、フェニキス上層部は侵攻を決定してしまった。
 そしてその暴走は私たちをも殺しつつある。
 『侵略者』にも『非武装民間人』はいた。彼ら彼女らは、『セントーラ』の学問機関へ留学していたらしい。だから、フェニキスの侵攻に
『侵略者』は慌てた。艦隊が両社の間に割って入り、旗艦が直接出向いてまで、彼らは『非武装民間人』を回収しようとしていた。
が、停戦に納得しない一部のフェニキスの部隊が、勝手に攻撃を行った。その攻撃は『セントーラ』だけでなく、『非武装民間人』の避難船も撃墜した。
 『侵略者』は激怒した。『総司令』と呼ばれる『侵略者』の頂点に位置する存在が、一番激怒した。
 つまり『フェニキス』は、『侵略者』の本隊と、直接やり合うことになったのだ。
 即座に彼女は防戦から攻撃に転換した。それは、今までの戦争が、『あくまでルールに則って行われていたゲーム』だったと知るのに、
十分すぎた出来事だった。それは、一方的な殲滅戦だった。
 見せしめとばかりに、私たちのホームだった別大陸の『フェニキス』本国は、総司令座乗の旗艦が空中に投影して映す映像の中で文字通り
跡形もなく破壊された。それを見せつけた後で、彼女らはこちらへ牙を剥いた。
 戦闘に参加するのは、旗艦一隻。セントーラへの救援に残りをすべて投入。しかし、そのたった一隻に私たちの敗北は、決定させられた。
反撃どころか抵抗すらできない、容赦のない攻撃。離脱する船は脱出艇すらも容赦なく相手の艦載機や対空砲は落としていく。
 空の戦力が壊滅した後は、地上戦力を片付ける番だ。その飽和攻撃の雨霰の中に、いつしか私たちはいた。私たちが乗って来た船は、
とっくに沈み、空中で四散している。逃げる場所も逃げる術も無かった。
「抵抗は無駄だ、降伏も認めぬし捕虜も取るつもりはない!
 死ね!
 滅べ!
 貴様らが殺した我らの子らのように!」
 勝利が確定した時に『侵略者』の『総司令』が発したのは、無慈悲な処刑宣言だった。
 ついに、旗艦の砲台の一つがこちらへと向けられた。私は咄嗟に隣にいたツチラトを突き飛ばした。
「リュミール!!」
 私の名前を叫ぶツチラトへ、笑顔で私は手を振った。熱いと思う暇すらなく私の意識は蒸発して消えた。
 私の「戦争」は、ここで終った



ぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴ

 目覚まし時計のアラームで、すべては消えた。目を開けると、見知った天井と照明が目に入る。
「ん・・・・・・。」
 アラームを手探りで消して私は伸びをする。こんな夢を最近よく見るようになった、そう思いながら。
 私は『リュミール』じゃない、『留備 瑠美琉(るび るみる)』だ。両親を「長野の発掘現場近くの事故」で亡くした、
平成の日本の女子高生。ここ最近は「未確認生命体」というバケモノが、私の住む東京で人を殺す事件が相次いでいた。
 でも、私はそれに巻き込まれたことはない。割と近隣で事件は起きていたこともあったけど、日常は揺るがない。それに学校は
いつも通り始まる。
「行ってきます。」
 一人暮らしのアパートの部屋で、朝食を食べて皿を片付けて、テーブルの上の両親の写真に挨拶をして、私は部屋を出た。
その日もいつも通りの日常が始まるはずだった。
「きゃあああ!」
 いつもの通学路をゆったり歩いていると、その途中で悲鳴を聞いた。私は思わず、そっちへ走って向かった。
 赤い水たまりの中にジャージ姿の女の子がうつぶせに倒れていた。私はそれをなぜか冷静に見つめ分析していた。年恰好は私と変わらないだろう、
長い金髪が地面に広がり、血で赤く染まっている。そして、ピクリとも動かない。
「お姉ちゃん!お姉ちゃん!!」
 その傍には、倒れている少女に手を伸ばしながら叫ぶ幼い女の子と、その子を抱きしめて腰を抜かしている母親らしい女性がいた。
 「お姉ちゃん」というのはジャージの子のことだろうけど、身体的特徴から二人は血縁ではない。ジャージの少女と女の子の関係は分からないけど、
少なくとも、『咄嗟に母子を突き飛ばして代わりに何かを受けた』事は理解した。
 じゃあ、いったい『何』に襲われたのか?
 少女の背中には、タイヤの跡がある。そこには土の他に赤黒い何かが付着していた。『乾いた血』だ。
 私の中で、警鐘が鳴る。これは異常だ、逃げろと。ひき逃げであっても、これはまずあり得ない。『すでに何人も轢いた車』でなければ、
これは起きない。
 母親に聞こうと思ってそちらを見る。母親は、少女を見ていないことに気づいた。道路の進行方向を見ている。
 私もそちらを見た。
 トラックが走ってくる。ただし、それは道路交通法の進行方向でいえば『逆走』の状態だ。私は運転席を見た。
 異様な服装の男がいた。形容しがたいが、『腕に直接、腕章を縫い付けている』ことだけははっきり言える。
「あ、あいつです、あの車が・・・。」
 母親が私に声をかけるのと同時、私たちの傍を通過したトラックはすぐ近くで停車した。
「バックします。」
 電子的な声がした。目を向けると、トラックがバックで突っ込んでくるのが見えた。余所見とかじゃない、わざとやっていると
何故か分かった。
「ちょっ・・・」
 私はとっさに横に転がった。倒れている少女の上を通過し、さらに轢いてトラックは急停車する。
「ジョベダバ」
 聞いたこともない言葉でこちらに話しかけながら、運転席から奇抜な格好の男が顔を出す。
 そいつと目が合った。そいつは笑みを浮かべた。そいつが普通じゃないと、はっきり分かった。
 そいつは目の前で「変身」した。私はこれまで「未確認生命体」に出会ったことがない。その存在も事件も、テレビの向こうのニュースでしかない
出来事だった。「異形の怪物」という情報しか知らない。でも、私は目の前のトラックの運転席にいるバケモノが『ソレ』だと確信した。
「逃げて!!」
 思い出したのは母親と女の子のことだ。二人はまだ呆然とそこに座り込んでいた。二人に叫びながら私は運転席にカバンを投げつけた。
「ギャ!?」
 うまいこと未確認の顔面にカバンが当たった。
「リントレジョブ、ロ・・・!」
 言っている言葉は分からないし、甲殻類みたいな顔から表情は伺えないけど、声色で怒ったことは理解できた。
「こっちだバケモノ!!」
 言葉が通じるかどうか分からないけど、挑発していることは伝わったのだろう。
「ボソギデジャス!!」
 言葉の意味は分からないけど怒っていることは私にも分かる程度の怒声を出し、運転席に未確認は引っ込んだ。
「お姉ちゃん!」
 私は女の子の声を背中で受けつつ、振り向かずに全力で駆け出した。音で分かる。そいつは私にトラックごと迫ってきている。
 あいつが戻ってきたのは、あの母子をてにかけるためだろう。でも、あいつの標的は今はあの母子から私に移っている。だったら、
あの母子からできる限り引き離すのが、私にできる精いっぱいの抵抗だ。
「バックします」
 あと少しでトラックの入れない狭い路地に入れる。勝利を確信した瞬間、すさまじい衝撃が背中から襲い掛かって私の意識は途切れた。

------

 槍を持った男が申し訳なさそうに言った
あの人の最期を

 黒い剣士は項垂れていた
すべては自分の招いた災いだと
ひたすら自分を責めていた
 息子の恋人の私に
なんでもしてやると約束した

 その時の私は目に光を失っていたけど
なぜか彼らの姿は認識できた
 だから、信頼できる彼らに託した
「ツチラトの詩」を

------

 顔に朝日を浴びて、私は夢から覚めた。最悪の悪夢による最悪の目覚めだ。
 今の私は『留備 瑠美琉(るび るみる)』とかいう名前じゃない。『日本』なんて国にもいないし『女子高生』でもない。
 ボレソラン団長の率いる旅芸人一座『エリミネッタ』の歌姫にして詩人『リュミール』、それが今の私だ

(つづく)

=====================================================================================
解説:「ルミール」
チェコの伝説「乙女戦争」に登場する吟遊詩人
・・・なのですけど
大体クローズアップされるのはメインを張っている
「ツチラト」「シャールカ」のため

解説に名前すら出ないことがほとんど
(乙女軍のリーダー「ヴラスタ」すら
ちょくちょく出る事あるのに、この有様)

この人は一応「男軍(プシェミスル王軍)」側の男性なのですが
この後で絡んでいくキャラクターたちや展開の都合上により
名前と下地だけを参考に女性キャラを作成することにしました
ではまた

参考書籍(敬称略)
ヤナーチェク歌劇「シャールカ」「物語の始まり」対訳と解説
(日本ヤナーチェク友の会 編)


解説:今回の未確認生命体
<メ・ギャリド・ギ>、ヤドカリ種怪人。『車でバックしてリントを狩る』という特殊なゲゲルをしていました。
最終的に『クウガ』に討たれたものの、ゲゲルを仕切る審判者の『ラ』への中間報告を怠ったため自動的に失格、
どのみち爆死していた模様です。

ではまた


2026年1月20日火曜日

Monster Makers’ Conflict 外伝SS:ある商人ができるまで(執筆&公開2024-06-24)

 こちらにも加筆修正したSSを投稿することにしました

 

もくじ代わりのページ

https://ebishakowevb.blogspot.com/2024/06/ss.html

=================================================== 

   ブログの引っ越し作業などでドタバタしたり病気になったりで更新が遅れました
すいません
 リハビリがてら、ずっと書きたかったお話を書きます
100%ギャグ&ぶっ壊れSSです

 大好きなキャラであるシャットさんについて、
「商人のシャット」を描くことに挑戦するにあたり
頭の中に用意していたプロットというか前日譚です
 なのでこのSSのプロット自体は相当最初に考えていました
色々あったり原稿を書いたテキストの置き場所を忘れたりで、
ここまで遅れてしまいましたが(汗)

 実は一番最初に構想していたSSだったりします(汗) 
(2026/01/20加筆修正)
=====================================================================================
Monster Makers’ Conflict 外伝SS:ある商人ができるまで(執筆&公開2024-06-24)

---ノベル「モンスターメーカークロニクル リザレクション」が始まる前のお話です---

 それは、ウルフレンドの地中海---エルセアの沖を行く、とある海賊船の上で起きた。
「ノーラの姐御、オレ、商人になる!」
 ”卒業”を前にしたシャーズの少年『シャット』の言葉に、「ぽかーん」と、シャ-ズの女海賊船長『キャプテン・ノーラ』は口を開け放した。
「うわああああああ・・・」
 刹那、マストから悲鳴を上げながら見張り役の船員が海に落下した。
「火事だああああああ!」
 そして船の厨房から黒煙を上げながら真っ赤な炎が上がった。
 さらに、水面に飛び出た『地中海の王』が、岩礁に激突して気絶した。

「あのな、シャット、あんたは・・・・・・」
 『ノーラの姐御』こと、ウルフレンドでまず知らない者はいないだろうネームドの海賊『キャプテン・ノーラ』は、頭を抱えて溜息をつきつつ、
言葉を頭の中でじっくり選んでから続けた。
「”商人”って仕事が何なのか、分かっているのかい?」
 自分を姉御と慕う愛弟子かつ愛すべき弟分へ、キャプテン・ノーラは呆れ気味に問いかけた。
「もちろん!
 物を買い取ってさらに高い値段で売り付けて儲ける商売でしょ!
 そのくらい、オレも知ってますって!」
 とても元気よく、シャットは答えた。シャットの返答は、大方間違ってはいない。だがしかし、大事なものを見落としている。
 ノーラは落ちかけたキャプテンハットを溜息混じりに被り直すと、再度、口を開いた
「それじゃあ、商人にとって一番大事なことは、分かっているね?」
「もちろん、『破産しないこと』でしょう?」
 シャットの返答は、間違ってはいない。だがしかし、ノーラが聞きたい答えではない。
 そして『姐御の顔色』を見て、それを窺い知れないほど、シャットは間抜けではない。彼女との付き合いは、転生人生でずっと続いていた。
彼女の一番弟子は、一番の弟分は自分だと常に胸を張って幾度も生まれ生き生まれ変わりを繰り返してきたシャットは、彼女の顔色で何を彼女が考えているか
察することができる(と、本人は思っている)。
「それに、商売をする土地のギルドと仲良くしなくちゃ。」
 これも姉御から教わってきた大事なことだ。ウルフレンドは、まだ冬の時代を抜けたばかりとは言え、あちこちに都市があり、商人のギルドがある。
余所者が挨拶もなく勝手に街で商売を始めるなら、ギルドは即座にその非礼のツケを取り立てるだろう。
「そうだな、それは大事なことだね。」
 だがしかし、それもノーラが聞きたい答えではない。そして『姐御の顔色』を見て、それを窺い知れないほど(以下略)。
 他に大事なことは何なのか、シャットは尊敬する姉御を失望させたくない一心で考えた。そして閃いた。
「そうだ、部下とお客を大事にすることです!」
「そうだね、シャット」
 ノーラの姉御の顔に微笑みが浮かぶ。『惜しいところまで行った!』とシャットは確信した。そして考える。
 これまでの問答から導き出される答えは・・・。
「商人として商売をする上で大切なものは、『信用』ですね!」
「その通りだよ、シャット。」
 ものすごく優しくノーラに言われ、そして自分の口から出た言葉を頭の中で噛み砕いて、シャットは気づいた。
 自分がこれまで数々の武勇伝を築き上げて得たのは、『ウルフレンド最悪のいたずらっ子』の二つ名だ。これまで海賊として盗賊として行ってきた
数々の悪行(と、本人は思っているが、された側の認識は大抵”悪戯”止まりである)は、どう考えても『信用を得る』どころじゃない。
 最悪、店の場所によっては客としてやってきた、かつての被害者(大体はオーク)に捕まって、罪をでっちあげられてでも牢獄に送られる可能性だってある。
(袖の下が通じないマトモな司法が期待できるほど、ウルフレンドは甘くはないのだ。)
 だがしかし、商人になったなら、そういった面々も相手にして商売をする必要もあるだろう。もしくは商売敵として対峙する事もあるだろう。
「お、オレの店が、燃える・・・。」
「何を想像したのか、察しが付くよ。」
 他人から見たら唐突に飛び出た意味不明な言葉も、付き合いが長いノーラには思考の経緯含めて理解ができた。
 かと言って、せっかく『海賊』以外の生き方を選ぼうとしてくれている弟分に、その生き方を諦めさせることはできない。
 それに『商人』という職業は、表にも裏にも、あるいは双方の橋渡しにもなれる可能性を秘めたものだ。自分が教えた内容も、シャットのこれまでの経験も
きっと活かすことができるだろう。
「店を開くなら、ブルガンディかエルセアにしな。そこなら、脛にキズある奴でも問題ないだろ。」
 白黒になって固まってしまった弟分へ、ノーラは助け舟を出した。
「あねご~!」
 敬愛する姉貴分からの助け舟に歓喜しつつ、顔から出るものを全部出しながら、シャットはノーラに飛びついた。
「待ちな。まだ店を出していいとは、あたいは言ってないよ!」
 シャットを拳骨で撃墜しながらノーラは言った。結果、甲板にすさまじい音を立てながら、シャットは頭を下にしたまま垂直に突き刺さった。
文字通りに。
「いいかいシャット。本気で商売をやりたいんなら、あんたには身につけなきゃならないものが山ほどある!
 その試練を乗り越える覚悟はあるかい!?」
「もちろんです!」
 上半身を甲板に刺したまま、ピン!と姿勢を正してシャットは応えた(逆立ちのままだが)。



 さすがに、いきなり商売をさせるわけに行かないので、知人の商人たちの協力を得つつ、ノーラはシャットにいくつかの『試練』を与えた。
 結論から言うと、シャットはノーラの期待にきちんと応えた。ノーラの使い走りで読み書き程度はできていたし、金銭感覚も養われていた。だから、
与えられた試練を次々と突破してみせた。
 次にノーラは、シャットに船員付きの船を与えることにした。商売には商品の輸送も、部下を使うことも、護衛を雇うのも必須だ。これは最終試験だと、
船を与えられたシャットは喜びながら気を引き締めた。
 シャットは船を海賊行為に使わず、輸送船として使った。荒事をできるだけ避け、安全に行くことができる航路を選んだ。ここまでは合格だった。
 しかし・・・・・・・・・。
「シャット、あんたが相手するのは一般人も含まれることになる。
 あたいが言っている意味、分かるよな?」
 ある程度まで船や人の扱いを見た後でノーラは聞いた。シャットは頷いて答えた。
「もちろんです!
 誰が相手だろうと、絶対にナメられたりしないよ!
 このシャット様をナメたヤツには目にもの見せてやります!」
 ノーラはその返答に、足元を強く踏みつけた。そこは甲板の板の一枚で、その端っこにシャットは立っていた。
 だから、テコの原理でシャットは空高く飛んだ。たまたま上空を通過中だったハーゲンとヴィラフレックは、一瞬だけ自分たちの視界に入った
『空を飛ぶシャーズ』に目を疑ったものの、目をこすった後でそこにはいなかったので、気のせいだと思うことにした。
 シャットは船の上の同じ場所に落っこちて、足元から甲板に突き刺さった。
「こいつは、さすがのあたいも骨が折れるな」
 下半身を船の甲板に突き刺したまま、自分の身に何が起きたのか把握できず固まっている弟分を見ながらノーラは頭を抱えて呟いた。
 ノーラが聞きたかった正解は、『礼儀作法』だ。キャプテン・ノーラは転生者だ。だから、どの世界でも職種や価値観を問わず『礼儀作法』は
共通して重要な要素だと知っていた。
 礼儀正しい相手は信頼される。信頼される相手は取引を持ち掛けずとも向こうから持ち掛けられる立場になる。
 逆に、無作法な奴は信用されない。取引を持ち掛ける相手は限定されるし、持ち掛けてくる相手もまた信用ならない奴ばかりだ。
ようは『類は友を呼ぶ』というやつである。
 もちろん、その程度で済むならまだマシだということもノーラは知っていた。調子こいた挙句に自分が絶対に敵わない巨竜の尻尾を踏んで挑発し、逆に
後悔する暇すらなく踏み潰された輩の話は、ウルフレンドにも尽きない。
 だが、と、ノーラは考えた。海賊稼業で慣らしてきた自分に『礼儀作法』など程遠い事柄だ。もちろん海賊に礼儀作法が無いわけじゃない。
だがそれは、商人たちや相手にする一般の客には縁が薄いものだろう。彼らに通じる『礼儀作法』でなければ、遠からずシャットは失敗する。
 どうするべきか・・・ようやく自分の状況を理解して、甲板に下半身をめり込ませながら抜けずにジタバタしている可愛い弟分を眺めながら、
ノーラは『礼儀作法』に詳しい人物を頭に浮かべた。

 数日後、港町エルセアの宿屋にて、ノーラはその人物と出会った。
「で、私が呼ばれたっていうわけ?」
 シャットの礼儀作法の講師として選ばれたのは、青を基調とした軽装鎧を身に着けた女戦士---王女戦士ディアーネだった。ウルフレンドのずっと南にある
島国『レオスリック』の王家の、正真正銘、本物の王女であり王族である。
 ノーラは彼女とエルフ族のロリエーン、そしてまだ転生を果たしていない魔術師ルフィーアの『三人娘』とは、旧知の仲だ。
「ほら、あんたって本物のお姫様じゃないか?」
 ノーラは即座にディアーネの疑問に答えた。
「お姫様で冒険者なら、他にも適任がいるでしょ?」
「訂正するよ。”ゾラリア王家との揉め事を抱えていない”本物のお姫様は、あんたしかいないんだよ。」
 ノーラの訂正に、なるほど、と、ディアーネは納得した。『姫』に該当する人物は二人ほど思い当たるが、ゾラリアの政治的内紛で追われる身だ。
対してディアーネは、それがない。そもそも彼女の実家であるレオスリック王家自体が、ゾラリアとは地理的条件も含めて縁が遠い場所だ。
 レオスリックは、ウルフレンド大陸の断崖絶壁と海に囲まれた島国である。ウルフレンドと隔絶したその環境のおかげで大戦の影響を最も免れ、滅亡からも避けられ、
当時の繁栄を唯一維持し続ける国家としても有名だ。
 ゾラリアの役人も、ベング高原へ手出しはしても、レオスリックまで足を運ぶ者は王家への使者以外にはいない。行く手段が限られている上に、
船で行き来するだけで一苦労だ。
 空を飛ぶ技術はとっくに失われているし、ドラゴンライダーも未だ世界に復活していない。
 そもそも、そこまで苦労してレオスリックに手を出せたとしても、迎撃に出るのはウルフレンド屈指のネームドのディアーネだ。
 あの災厄に等しい魔女『ミッドガルダ』をはじめとした脅威すら、彼女の振るう『ホリィアックス』に撃退されて来た。つまり、勝てるネームドは限られる。
 これだけでも侵略する側には絶望的なのに、彼女の人格と人脈のおかげで、あちこちにいる光のネームドが敵に回る可能性も高いと言えた。
 ようは、レオスリックへの侵攻は『割に合わない』のだ。だから、独立した王家を認め放置するのが無難な扱いだと言えた。
「仕方ないわね、引き受けてあげるわ。」
 肩をすくめながらディアーネは言った。今やっている親友のルフィーアの捜索は、未だうまく行っていない。まだ転生していないのかもしれない。
一旦捜索を切り上げ、気分転換をするにはには、ちょうどいいだろうと思ったのもあった。
「よろしくお願いするぜ、ディアーネ!」
 シャットはドヤ顔で自信たっぷりに腰に手を当てながらディアーネに言った。
「はい、だめ。」
 ノーラが叱るより早く、容赦なく飛んできた鉄拳で、シャットは『飛んだ』。文字通り、垂直に真上に。大きな音を立てて、少年シャーズは天井に刺さった。
「これは、マナーの教え甲斐があるわね。」
 薄レイク意識の中、宿の天井に刺さりながらディアーネの愚痴を聞きつつ、シャットは思い出していた。
 今のシャットには妹分がいる。エリミネッタという旅芸人の一座に拾われ育てられている、リュミールという少女だ。きっかけは、ノーラの姉御の常連客である一座が
船に乗ってブルガンディへ向かう時に、甲板の隅っこで彼女が歌っていた歌に自分が聞き惚れていた事だった。以来、その子は自分にすごく懐いてくれている。
 そんな可愛い子がこの前、レオスリックに行ったという話をしてくれた。
『ディアーネお姉ちゃんは、すごく優しいお姫様なんだよ!』
 まったく全然、正反対の対応をされたが、あの子が嘘を言うなど思えない。薄い意識の中で考えたシャットは一つの結論に至った。
 ディアーネが優しいのは、たぶん、あの子が小さい女の子だったからだろう。
『今度、生まれ変わったら、幼女になろうかな・・・』
 どこをどう経由してそうなったのか、そんな考えすら放棄したまま、シャットの意識は闇に落ちた。

 こうして、王族直伝のマナー講座は幕を開けた。
「この剣にかけて、値切らせねぇぜ!」
「客を脅してどうするの!」

「いただきまーす」
「スープを飲む時はスプーンを使って!
あとナイフを垂直にステーキに突き立てちゃダメ!」

「オレはこいつを手に入れるのに、3か月の船旅と5か月の陸路を・・・」
「説明は簡潔に!
 あとナマモノにそんな時間かけたら腐るでしょ!」

「これはこれは泥棒さん、死ね!」
「いつもの調子で襲い掛かるんじゃないわよ!」
「いや、これは別にいいんじゃないかい?
 あといつもの調子じゃないよ、なんというか・・・キモい。」

 時間にして一月ほど、数々の艱難辛苦を乗り越え・・・。
「初めまして、ボクはシャットと言います。
 以後、お見知りおきを。」
 シャットは見事に商人としての礼儀作法を身に着けた。
「やったよ、やったよノーラ!」
「ああ、本当にありがとうディアーネ!
 シャット、よくここまで成長した!
 さすが、このキャプテン・ノーラの弟分だ!」
 教師役のディアーネも姉貴分のノーラも、人目も憚らず互いに抱き着き泣きながら祝った。
「そんなに喜んでくれるなんて、オレ、生まれてきて良かった!」
 シャットは、まだ帰還しているか分からない天の神々に感謝した。



 それから、時間は経過して・・・。
「素晴らしいわ!」
 話を聞き終えたロリエーンは、感涙しながら拍手した。時はリザレクション・エイジ。あらゆるものが帰還、あるいは再生する、
混沌とした時代だ。
「いつ断って帰ろうかって考えたことも、一度や二度じゃなかったわよ。」
 ディアーネは、ため息混じりに言った。
「いやぁ、ディアーネには本気で感謝しているよ、うん。」
 シャットは後頭部に玉の汗を浮かべつつ、ディアーネに感謝の意を伝えた。
 ここは、ブルガンディ島にあるシャットの館、投資で成功した彼は商売の拠点になる場所を作ろうと思い至り、すべての情報や物資が
ウルフレンド中から集う、あらゆる勢力から独立した島に、館を建てたのだ。
 もちろん、『ブルガンディ島に館を持つ』というステイタスも得られるというアドバンテージを見据えての、一石二鳥の行動でもある。
「それで、リュミールちゃんとは、その後どうなの?」
 いたずらっぽい笑みを浮かべながら、ロリエーンは聞いた。
「待ってよロリエーン、あの子とはそういう関係じゃないから!
 ていうか常連の重客に手を出すとか、ノーラの姉御に殺されちゃうよ!」
 卒業した今でも、シャットにとって『ノーラの姉御』は頭が上がらない、尊敬すべき存在だ。彼の自室には、いつのころ描かれたか分からない
古い女海賊の絵が飾ってあるという。
「ああ、そういえばさ、沖のほうに沈んでいる大戦の船の引き揚げの話だけど・・・。」
「あ~、宇宙から来た連中の船ね。
 そんなの引き揚げて、大丈夫なの?」
 ディアーネたちも、そいつらに『大戦』の時は散々辛酸を嘗めさせられたことを覚えている。だが、彼らは無敵の神というわけではなかった。
撃墜に成功した船の残骸は、今もウツフレンドを含む世界のあちこちで眠っている。
 その一つ、巨大な空母がブルガンディの沖に沈んでいるのが最近発見されたのだ。ちょうど、冬の時代に彼らとの間に戦いが起き、
巨大空母『マリー・ア・ヴェール』が司令官ごと沈められたという記録があった。
 そこで、商人たちが有志を募り、引き揚げ計画を画策しているのだ。
「え~、何かお宝を積んでるかもしれないじゃん!」
 ロリエーンは楽観的な意見を言った。
「それが、さ・・・。」
 シャットは躊躇いがちに切り出した。
「船の劣化が酷くてね、試しにこっそり部下を送ってみたけど、フックをかける端からボロボロと構造が崩れてったそうでさ・・・。
 危ないから部下たちも引き上げさせて、失敗の確率が高いから、計画への参加も断っておいたよ。」
「えええ~、ロリちゃんつまんない!
 船のお宝とか、ワクワクするのに~!」
 シャットはロリエーンのこの反応を予想していた。
「いや、引き揚げるのもタダじゃないんだよ。
 例えば、深海に沈んだ船からワインの箱を引き上げるだけでも、費用がいくらすると思ってるのさ?
 それに、積み荷だってお宝ばかりじゃないんだよ?
 危ない兵器だったら責任がボク・・・っと、オレに降りかかるからね。」
 シャットは商人モードの時は『ボク』、プライベートでは『オレ』というふうに、一人称を使い分けていた。そうすることで、「スイッチの切り替え」を
行い、表と裏の顔の使い分けもスムーズにできていた。
 二人のやり取りを見てディアーネはクスリと笑った。かつてのシャットだったら費用対効果や危険など考えもせず、
ひたすら船の引き揚げに邁進していただろう。
「あとね、実際におかしなことも起きてたし。」
 まだ納得がいっていなさそうなロリエーンを窘めつつ、シャットは続けた。
「何か変なものでもあったの?」
 頬を膨らませながら、ロリエーンは問いかけた。それに対して、シャットは少し考えてから口を開く。
「調査した部下からの話だけどね、どうにかフックに引っかかった、一部の頑丈な船体の構造物だけ、船の上に
引き揚げられたそうなんだけど・・・。
 ”大きな植物”が絡みついていたらしいんだよ。」
 ディアーネとロリエーンは顔を見合わせた。
「植物?
 海藻じゃないの?」
 ロリエーンの意見を、シャットは首を振って否定した。
「いや、地上の植物さ。伝書バトで連絡を受けてサンプルを貰ったんだ。
 現場から指示を仰がれたんだけど、すぐに”こいつも含めて海の中に戻せ”って、サンプルを返しながら言っておいたよ。
 こういう『あり得ないもの』には、触れないほうがいいからね。」
 ロリエーンはシャットの言葉にキョトンとしつつ、言った。
「それもディアーネから教わったの?」
 シャットはそれに、誇らし気に答えた。
「いいや、こいつはノーラの姉御から教わった海賊の伝承さ。」
 どうやら自分は、シャットの中では、あのキャプテン・ノーラには永遠に勝てそうにない。
 ディアーネはそれを思い知りつつ、海に戻されたという『未知の植物』とやらに、思いを馳せた。
*
*
*
 生命維持装置代わりに伸展させていた『肉体』から、本体を引きはがす。
 傍から見れば巨大な植物---それも陸地の---に、見えないこともないそれは、光合成と周囲を通りかかる海洋生物の捕食を行い、空母という
巨大質量の構造物に挟まれて動けない本体の生命維持を、ひたすら行っていた。
 今ようやく、自分の体を長いこと拘束していた空母の構造物が外れた。座乗艦だった巨大空母『マリー・ア・ヴェール』は、今や見る影もない。
部下たちと共に様々な任務に就き、過ごした、我が家のような船は、すっかり自然に還っていた。
 上層部の方針で、自然分解される物質でできていたからだ。それでも、巨体を分解しきるのに800年ほど経過してはいたが。
 『ソレ』は、海面へ顔を出す前に周囲を探した。800年前の戦いで散った部下たちのドックタグを、海底から拾い集める。あの船の乗員は
自分が育てた。下の兄弟か子供も同然の部下ばかりだった。
 視界に入るすべてを回収してから、朽ちていく船に敬礼をして、『ソレ』は海面へ上昇を始めた。

(おわり)

=====================================================================================
<あとがきとか解説とか>

解説:シャットの投資成功
なんと、公式です!
ノベル版モンスターメーカーリザレクション クロニクルの作中で触れられていました!
おめでとうございます!

解説:ウルフレンド最悪のいたずらっ子
これも、公式です
何を今までやらかしてきたのか、この名前から察せられると思いますが、
この状態から投資で成功し、ブルガンディに館を持つまでに成り上がったシャットさんは
彼のファンとしても、純粋にすごいと思います


ではまた

出会い20周年個人的記念SS:ある闘士の独白(執筆&公開2021-08-29)

 こちらにも修正したSSを投稿することにしました 

 

もくじ代わりのページ

https://ebishakowevb.blogspot.com/2024/06/ss.html

==================================================

  英雄譚、もしくは武勇伝、あるいは冒険譚。それを書いた奴、もしくは主人公は恵まれている。
 あたしに言わせれば、そうだ。それがどんな境遇であっても「ネームド」として、
「名のある人間」として認められているから。
 あたし「アルボア」なんかと違って。


Monster Maker ResurrectionRPG FAN SS- Monster Makers' Conflict Side Stories-
出会い20周年個人的記念SS:ある闘士の独白(執筆&公開2021-08-29)

---ノベル「モンスターメーカークロニクル リザレクション」の前と最中と後のお話です---

 最初の記憶は、貧しい農村だった。時代がいつかなんて分からないし、どうでもいい。
そこでは子供は「労働力」だった。権利なんて何もない、ただ働かされてメシをもらうだけ。
 のたれ死にしたり事故で死んだりしても、悲しむ奴は誰もいない。

 どのような村にも、昔話や伝説が好きな老人は一人二人いる。その老人の語る「おとぎ話」、本で語られる「英雄譚」、
闇を討ち光が勝利する「伝説」。あたしみたいな名も無いただのヒューマンのガキは、それをただ眺め聞いているだけの存在だ。
 運が悪いと、そいつらの話を盛り上げる犠牲者にされたり、悪の勢力の悪事の被害者にされたり
魔術師の実験動物、あるいは生贄にされたりもする。それが、「名も無い死すべき種族」の、この世界における運命だと、現実だと、
あたしは早いうちに思い知った。
 どうでもいい生を終えて、雑に転生して、またどうでもいい生を送る。その繰り返しだ。
ダークエルフのお姫様に飼われたり、奇妙なペットとの出会いもあったりしたけれど、結末は変わらない。
その頃の、あたしは、まだ希望というものがあったかもしれない。一応、村のために努力して働いたり、助けになる手伝いをしたりはしていた記憶がある。
 もっとも、それらの努力が実を結ぶことはなかった。酷い時には裏切りこそが、あたしの終わりだった。
 最終的にあたしが希望を捨て去って神々や光に背を向けたのは、当然の帰結だった。誰にも文句は言わせない。文句を言いたいのは、あたしのほうだ。

 最大の転機だったのは、あの忌まわしい『モンスターメーカー戦争』の最中だった。後に『滅亡戦争』と名付けられ禁忌とされる戦争が起きたのと同じ時代に、
あたしは友人の商人カオニュを助けるべく彼女の反乱に加わった。その時代に故郷があるベング高原を納めていた領主は酷いヤツだった。もっとも、
ベング高原に領主として赴任してきた貴族にマトモなのはいなかったけど、そいつは特に酷かった。高い税に音を上げた遊牧民の反乱は頻発していた。あたしたちが加わったのは遅すぎるくらいだ。
 結末を言うと、反乱は失敗した。領主が戦乱の最中に亡くなり、その息子が跡を継いだんだけど、そいつが優柔不断でバカ過ぎた。
当時、どういうわけか あたしの部族の長は『トリカゴ』の司令官の一人と婚姻をしていた。『冥婚』とか言っていたんで、結構前からの関係らしいけど
そのために『トリカゴ』の艦隊丸ごと一つが仲裁に入ってくれた。
 この同時期、世界が滅びるかもしれない最後の戦いが刻一刻と迫っていた。そんなわけで、領主も反乱側も争いの継続をしている場合じゃなくなった。
ところが、仲裁ありきとはいえ停戦を持ち掛けたのは領主の側だったのに、新しい領主は契約を破り捨てた。その時捕まっていた あたしは、領主側で戦っていた師匠に首を刎ねられた。

 後で聞いた話では、仲裁を反故にされて激怒した『トリカゴ』の司令官が領主を”館ごと真っ二つ”にしてしまい、この争いは終わったらしい。
まぁ、あのバカ息子は『トリカゴ』も迎撃するつもりだったらしいから、遅かれ早かれ、こうなっていただろう。ベング丸ごと宇宙から来たエイリアンどもに接収されたのは想像に難くない。
 
 最悪の形で最悪の戦争中に処刑された後も、あたしは幾度も転生を繰り返した。
 冬の時代も含め、色々な世界に転生して、ろくでもない死に方の連続の末に、冬の時代の先の時代に転生した。その時代に、あたしは闇の軍団のモンタズナ様に雇われることになった。
 どういうわけか、あたしはネームドになっていた。あたしはモンタズナ様の誘いに、二つ返事でOKした。
 モンタズナ様はリザレクションの時代、まだネームドが有名な奴も含めてまばらな時代な間に、一人でも多くのネームドを引き入れようとしていた。
魔術師でない、あたしでさえも『ネームドだから』という理由で掻き集める対象に選ばれたわけだ。もっとも、出会ってすぐに筋肉を褒めてくれたから、理由はそれだけじゃないことも察した。
闇の軍団は金払いが良かったから、文句はなかった。金さえあれば、少なくとも飢えたりしない。正義や光が、あたしのようなものを救ってくれないことも理解していたから、躊躇もなかった。
 いくら祈っても、踏みにじられ奪われてきた。だから、あたしが奪う側に回っても文句は言わせない。それに、いつかは今の生活を抜ける事もできる気がした。それがいつになるかは分からないけど。
 闇の軍団は思ったよりも、あたし向けの組織だ。あたしの鍛え上げた筋肉と体格は、それだけで威嚇になる。そして荒事になれば鍛えた力を存分に発揮できる。悪くなかった。
もう踏みにじられる側にいるのは御免だったし、踏みにじる側の気持ちも理解できた。やつらは、あたしたちを踏みつけるときに、こういう光景を目にしていたんだと、闇の軍団の活動で知ることもできた。
 綺麗事ばかりの光の勢力なんて信用できない。あの連中が考えるのは大局ばかり、かつてのあたしのような『名も無き民』は、救済の対象に入れるのがいたとしても、よほど運がいいやつ限定だ。
もう頼らない。あたしはあたしの手で、あたしのやり方で生きてやる。

 あたしを雇ったモンタズナ様---闇の勢力の一派閥を率いる男も、鍛えられた筋肉を持っていた。あたしの筋肉を褒めてくれた点から、その想い入れかなりマジだえおう。でも、彼は一応は魔術師・・・らしい。
一応魔術を使うから魔術師だろう、目の前で見せられたし。そしてゴーレムも作るし、グラナールという悪魔使いをはじめとした多くの魔術師や闇の神官を彼は配下に引き入れていた。
 魔道士による世界の支配、それがモンタズナ様の最終目標だとグラナールから聞いている。まぁ、あたしにはどうでもいい。支配される側にいるのは慣れてる。野望が成就しても大して変わりはしないだろう。
 ただ、「筋肉を育てる」魔術師は彼くらいだろう。確かにその点では「最強の魔術師」と言える。魔力を育てる事に集中している魔術師の中で魔術抜きの殴り合いで勝てる魔術師はいないだろう。
あの、ガンダウルフでさえも。「それが魔術師の戦い方なのか?」と聞かれでもしない限りは。



 あたしは、うまくやっているつもりだった。非魔術師の、あたしにできることは限られている。それでも一応はネームドになったんだから、切り捨てられることはないだろうと思っていた。
でも、あたしは油断のツケを割と早く払わされる羽目になった。港町エルセアの拠点で悪魔使いの魔術師「グラナール」と組まされた任務の時のことだ。
初対面でも思ったけど、グラナールは見るからに卑しげな奴だった。強そうな奴には媚びへつらい、弱そうな奴は卑下する・・・あたしが見てきた中では珍しくも無い男だ。
 光の勢力の奴はこういうのを軽蔑するだろうけど、それは現実を知らず理想の中で生きているからだ。これが当たり前の現実で、あたしは今まで生きてきた。
領主が威張り散らすのも、貴族が平民を搾取するのも、大人が子供を働かせるのも、あたしの生きた世界ではごく自然だった。名も無い存在、力無い存在が
『消費』されることで、この世界は成り立っている。
 まぁ、グラナールがどんな奴だろうと、あたしの任務に邪魔でなければ問題ない。金のために色んな連中とこれまで組んできたこともあった。すごく嫌な奴もいた。
グラナールもそいつらと同じ、どうせ契約でつながった仲だ。任務が終われば、『モンタズナ様の配下』という以外の関係は解消される。
それにグラナールは、あたしを女でなく盾として見てくれている分、あたしは安心できた。あたしはもう、女として見られる気はないけど、変なことをされるのも困る。
 話を戻そう。何が起きたかというと、まずグラナールの提案で、あたしたちは二人のネームドを仲間にした。
 際どい衣装の戦士ミリエーヌと、あの「闇の三姉妹」長女のイフィーヌだ。特にイフィーヌは目覚めてまだ間が無いらしく、力もそれほどじゃなかった。
酒場で暴れようとしていたから取り押さえた。手を掴んだ時に殴られる覚悟はしていたけど、あたしの腹筋はノーダメージだ。
 あたしは思った。これは、チャンスなのじゃないかと。今の生活を抜けて「名も無い存在」からも抜け出すことができるんじゃないかと。
うまくいけば、闇の三姉妹に代わる新たな戦士としてモンタズナ様へ、あるいは別の闇の派閥へ売り込むこともできるかもしれない。伝説や英雄譚のネームドに仲間入りできるかもしれない。
 あたしは、そんな甘い考えを、思わず浮かべた。
 もちろん、甘かった。グラナールは最初から、手柄の独り占めを狙っていた。あたしはただの捨て駒でしかなかった。
 ミリエーヌは途中で抜けたけれど、イフィーヌという戦力が手元にある時点で、あたしのことは「用済み」だったんだ。
 グラナールは、あたしを悪魔の生贄にすると言い出した。イフィーヌが手を伸ばしかけたのを見て、あたしは悲鳴を上げて逃げ出した。
 悪魔の生贄になる事ほどロクな終わり方はないことを、あたしはこれまでの転生人生で知っていた。頭でなく体が記憶していた。
 雨の音で二人の会話はよく聞こえなかったけど、「裏切者」とグラナールが言っていたのは聞こえた。もう闇の軍団にも戻れないかもしれない、それでも恐怖が勝った。

 イフィーヌに追いつかれた。
 散々、あたしにコケにされた仕返しとばかりに、その拳が腹にめり込んだ。
 あたしは腹筋が大きく凹まされるのを見ながら、嘔吐して気を失った。



 魔王は無慈悲で残酷で残虐だった。
 あたしは恐怖の悲鳴を上げながら死んだ。けど、それで終わりじゃない。悪魔の生贄は、ここからが本番なんだ。
 死んでも魂は捕らえられたまま、魔王の拠点へ連れて行かれた、他の魂たちと同じく。
 そこで、あたしは悪魔たちの「食料」にされた。「食料」と言っても食べられて消えるわけじゃない。でもむしろ、そっちの方がマシだろう。
 ひたすら責められ苛まれて感情を引き出されるのだから。悪魔たちは負の感情を、特に「恐怖」を好んでいた。
あたしは、地獄に落ちて責め苦を受けた時と同等か、それ以上の感情を引き出された。
 魂が解放されることは、無いことは無い。目の前で別の魂が放り出されたことはあった。けれど、その魂は完全に擦り切れて、感情も出し尽くして何も反応しなくなった魂だ。
そして、放り出された先には魔物がいて、魂を美味そうに食っていた。そして、すっかりカスになった魂は、どこかへ持ち出された。
 あたしも、ああなるのだろう。
 むしろ、早くああなった方が幸せだろう。
 ここには苦痛と絶望しかなかった。
 かといって現世も変わらない。
 そして誰もあたしを記憶すらしないだろう。
 ただ、名も無い女が失敗して悪魔に捧げられただけ。
 あたしを示す一文があっても、名前は決して残らない。
 イフィーヌの冒険譚が世に出たとしても、あたしの名前はたぶん残らない。
 その他大勢として消費されるだけの魂だったと、あたしは全てをあきらめた。
 しばらくして、あたしは急に何かに掴まれて、そこからつまみ出された。
 床に投げ出されて、あたしは食われた。すでに裂かれた腹筋からこぼれた中身が貪られても、何も感じないし考えられない。そこから先は、考えることすらやめたから覚えていない。
 記おくすらもくわれたのか、だんだん、おぼえてることも、すくな・・・・・



 気が付いた時、あたしは転生していた。場所は、どこかの奴隷商の檻の中だった。あたしは鎖で鉄球につながれていた。
 この世界、『ウルフレンド』の転生は、いくつかパターンがあった。文字通りの「生まれ変わり」パターンの他に、
前世の記憶が今生きてる奴、同じ種族で性別を問わず、名前や容姿が似た誰かに流れ込む傍迷惑な「転生」パターンもあるのだ。
 「異世界転生者」の場合は種族の垣根を超えることもあった。
 そういうわけだから、傍迷惑な「転生」パターンだと、体の持ち主の記憶もある。ろくでもない、珍しくないありふれた、当たり前の生い立ち。
消費されるだけの人間の身だ。
 たぶん、あたしを戦力としてか労働力として必要とする奴は、程なくして来るだろう。いつの時代もそういう「消耗品」は欠かせないから。
オークとの戦いの前線行きか、真っ暗な坑道か、それとも闘技場での見世物か・・・。
 そう思っていたのに、あたしの運命は急に変わった。
「ジャドドリヅベラギダ(やっと、見つけました)!」
 あまり聞いたことのない言葉が、檻の外から聞こえた。確か、どこかの誰かが言っていた言語だった気がする。
 声のしたほうを見ると、男がそこに立っていた。檻のすぐ外だった・・・はずだ。
「私と、結婚を前提に付き合ってください」
 言いながらそいつは檻の中に入ってきて三つ指をついて頭を下げた。鉄格子の外を見ると、奴隷商のオヤジとその用心棒が慌てている。
確か『カッコウ』とかいう名前の有名な奴隷商人だったと思い出す。ついでに、隣の用心棒は反抗的なあたしを幾度も殴る蹴るしてくれてた。
 でも、連中の慌てぶりは異様だ。入ってきたそいつの服装からして、上客であることは間違いないだろうけど・・・。
「ど、どうしよう、カッコウの旦那。
 オレ、こいつのこと何度か殴っちまって・・・。」
「だ、大丈夫だ、事情を話して誠心誠意謝れば許してくださる御方だ。」
 ヤバイ奴らしいけど、一定の人格者ではあるようだ。
 そして、檻のカギは外れていない。しっかり施錠されていた。つまりこいつは、鉄格子の中へ、どうやってかドアを開けずに入り込んだんだ。
もう、この時点で目の前のコイツが人外のナニカだと、あたしは悟った。
「・・・? 
お忘れですか、アルボアさん、私です私、ホエイ、イセ、です、よ。」
 明らかにしゃべり慣れていない共通語と、そいつの顔を見て思い出した。
 こいつは空の上から来た勢力「トリカゴ」のエイリアンどもの司令官の一人、『ガマグチヨタカ』だ。
 確か『ホエイ』とかいう、乳製品みたいな本名だったな。
 あたしのいた部族の長と冥婚していたとかで、反乱以外にも色々と協力してくれてた実力者だった。
(男運が無さすぎてグレてた長を立ち直らせてくれたとかで、重鎮たちが感謝してたような気もする。)
 ・・・いや、その前にこいつ今なんて言ってた?
 なんか「結婚してくれ」とか聞こえた気がするけど?
「ここでは話しにくいでしょう、出して差し上げますね。」
 ホエイがそう言っている間に、奴隷商のオヤジがは大慌てでカギを外しにかかっていた。なおホエイの右手は鉄格子にかかっている。
「勘弁してくださいよ、中佐殿~!
 その檻高いんですから、壊さないでください!
 あと、勝手に入らないで!」
 さすがにカッコウのオヤジも抗議した。
「失礼、つい感情が先走ってしまって・・・。」
 きちんとホエイは謝った。なるほど、人格者としての評価は合っているみたいだ。
 ・・・そういや、こいつ相当上の階級のヤツじゃねーか。今の階級は知らねーけど。

 こうして、あたしは自由の身になった・・・のは、いいのだけど・・・。
 この司令官、ホエイとかいう奴は、確か悪魔たちと付き合いがあった記憶がある。どういうわけかグラナールよりも親しげに会話していたし。
悪魔のほうも、一応は冥婚の妻のうちの姫さんへ、友人の奥さんに対するかのような態度をしていたし。
 ・・・ともかく、また生贄にされるのは御免だ。今のうちにクギでも刺しておこう。
「一応言っておく、あたしはデーモンロードの生贄にされたんだ。もう生贄にされるのは、御免だぜ?」
 ホエイは、さらりと答えた。
「ええ、おかげで大変でした。
 あの魔術師、よりによってあの御方にあなたを捧げるとか・・・。」
 『あの御方』と来たか。やっぱりこいつは、悪魔とかなり親しい方だ。それも同胞のレベルで。
「ご安心を、私があなたの身柄の所有権を褒美として下賜していただいたのです。
 恐れ多いお願いだとは思っていたのですが、通りまして・・・。」
 なるほど、それで割と早く、あたしは再びこの世界に戻ることができたわけか。
 でも、それで安心材料が増えるかというと、そうでもない。もっと確実な、コイツをどうにかできる材料が欲しい。『飽きて捨てる』とか、されないように。
 あたしは考えつつ、相手を見て、そして思いついた。確かこいつは魔術師だったはずだ、それもかなり高位の。
 だから、たぶん『アレ』があるはずだ。魔術師だったらどんな奴でも、そのルールに従っているとモンタズナ様から聞いていた。
「ホエイ、あたしに信用してもらいたいならさ、あんたのスペルネームを教えろよ。」
 まぁ無理だろうと、ダメ元だけど言ってみた。モンタズナ様や長老から聞いている、『スペルネーム』は魔術師の『真名』真名だと。
文字通りの生殺与奪を握ることができる。
 あたりまえだけど、グラナールは教えてすらくれなかった。アイツの場合は、あたしを最初からデーモンロードの生贄にするつもりかつ
護衛兼任の肉盾のつもりで連れてきていたわけだから、自分の生殺与奪権を与えてくれるはずもないけど。
 だから、せいぜい「いつか教える」程度の口約束を期待していた。ついでにその時の態度で本気度を見定めるつもりだった。
「いいですよ」
 そいつはにっこり笑うと、そう言って。
「xxxxxxxxxx」
 自分より背が高いあたしの耳元で、背伸びしながら囁いた。理解不能な言語だった。どういう意味かは理解できなかったけど、
こいつが言った言葉の内容は理解できた。
 コイツは頭がおかしいと本気で思った。
「本物ですよ、身内を除けば我が王たちにしか明かしていない、私の『真名』です。」
 あたしはさすがに、もう疑うなんてことはできない。こいつは本気だと、認めざるを得ない。文字通りの命を捧げられたも同然なんだから。
それに『スペルネーム』を聞いた以上、あたしが死ぬ以外でコイツがあたしを手放すこともしないだろう。
 ただ・・・救いなのは、少なくともこいつは信用はできる奴だという事だ。あの男嫌いの長老姫が、コイツにだけは心を許していたのを覚えている。
「で、これからどうします?」
 相変わらずの、たどたどしい共通語でホエイから聞かれた。あたしは、思わず黙った。言っている意味が分からない。
 あたしを買ったんだから、ご主人様はコイツのほうだろう。こいつの本拠地なりに連れて行かれるものと思っていたんだけど・・・?
あ、でも、あたしは『スペルネーム』を聞いちまったし・・・?
「・・・あの、私、あまりこのあたりに、詳しく、ないので・・・」
 うん、ますます分からない。どこの世界に、奴隷にこれからの行先を含んで身を委ねる主人がいるのだろう。まぁ、『スペルネーム』を奴隷にあっさり教える時点で
常識的に、もうあり得ないわけだけど。
 かと言って、今のあたしにもアテなんてない。エルセアに戻ってまたグラナールと組むのは御免だ。故郷のベングに帰ろうにも、あたしの部族はもういない。
荒れ果てた土地と砂漠、それに寒村があるくらいだ。(これは、モンタズナ様に調べてもらったから知っている事だけど。)
 それに、あたしが死んだ後で、どういうわけかあたしの部族は全滅したそうだ。
 ・・・そういえば、と、あたしは視界にいる司令官に聞いてみた。少なくともこいつが滅ぼしたとは考えにくい。あの長が部外者で男なのに身を預けるほどべったりだったし。
それでも、情報くらいは知っているだろう。
「あたしの部族、全滅したって知ってるか?」
 さりげなく聞いてみた。すると、ホエイは申し訳なさそうに言った
「はい、私の、尽力が、足りないばかりに・・・。」
 どうやら、戦闘でもあったらしい。『トリカゴ』も無敵というわけじゃないようだ。
「あの裏切り者どもは、本拠地の、島と、運命を、共にしていただきましたので、我々の命を、狙ってくることは、無いでしょう。」
 そして、こう付け加えた。・・・なるほど。つまり、あたしが討つべき仇敵も、この世にいないわけだ。
 『島と運命を共にしてもらった』というのは、聞かないでおく。少なくとも今は、まだその時じゃない。
*
*
*
 目の前で歩き始めた彼女を見て安心した。精神的なダメージは思ったより無い様子だ。記憶の著しい欠落のおかげだろう。
 確かにあの魔術師が彼女をあの御方の生贄にしてくれたことは、不幸中の不幸だった。心の底から感謝し畏敬し崇拝している、あの偉大な『至高の悪魔天使』に勝てる存在など
崇拝されるレベルのトップクラスのネームドしかいない。そもそも自分があの御方に---何より素晴らしい美しい存在に刃を向けるなど、考えることもできない。
 けれど、幸運はあった。手柄を立ててあの御方に喜んでもらった上で、褒美として所望するという方法があった。自分は、あの御方の配下なのだから、まっとうなやり方だ。
 そしてその考えは、うまくいった。もう、あの魔術師に渡したりなどしない。彼女は冥婚の相手の妻すら許した、自分の大事な「番(つがい)」なのだから。
 第一、人間たちの「悪魔を利用する」という考えが以前から気に食わなかった。悪魔は人間の道具などではない。魔界という異世界に生きる別種の生命体であり、
高い知能を持つ者や高度な魔術を使う者もいる、知性ある存在なのだから。
 自分や仲間たちと異なり、あの人間の魔術師は悪魔と深い付き合いはしていないだろう。それも、契約や利用とは違う本当の意味での「付き合い」の話だ。
自分たちのように、悪魔たちや魔界を救うための戦いに身を投じたことも無ければ、魔界をも壊そうとする存在に立ち向かったことも無いだろうし、そうなっても
真っ先に逃げ出す図しか頭に浮かばない。
 長く会っていない悪魔を含む同胞たちを思い浮かべて、そう言えば、と思い出す。この前、久しぶりに総司令官と通信を交わした。近いうち、再びこの惑星に侵攻を開始するという話だった。
ただこの地に根付くためだけに居座り勢に加わったわけではない、『橋頭保の確保と維持』という重要な仕事もある。
 彼女らには、どこかの勢力を推薦する必要が出るだろう。協力者の有無は戦局を左右する重要要素だ。もっとも、その時は今ではないし時間もある。情報を得ながら考える事は可能だった。
 もしかしたら、その時が来るよりもアルボアさんの寿命が尽きる方が先かもしれない。そうなったら彼女の転生先を追いかける必要性が生じる。
 『死』がきっかけで手放すくらいなら、短命種と知った上で正妻に迎えようなどという覚悟はしていない。
 だが、公私混同は司令官として避けるべきだろう。部下か子供たちか弟子にでも任せるべきか?
 いやそれこそ無責任だろう、ルールにも抵触しかねないし、それこそ公私混同の極みだ。これは、自分だけが可能な任務でもあるのだから。
「何を考えてるんだ?」
 思考が顔に出てしまったのか彼女が聞いてきた
「今度、総司令にどこの勢力を紹介しようかと考えてまして。」
 どうせバレるだろうし、バレたところで壊滅的な撤退戦からすでに回復した『トリカゴ』と魔界軍に、破滅から立ち直りかけのこの世界は何もできはしないだろう。
だから言っても問題はない。そう思って本当のことを言ったら・・・
 絶句された。
「あのな、さすがに世界全部を向こうに回してまで、あんたと付き合い気はないぜ!?」
「誤解です、攻め込む先の話では、ないです、我々の協力者として、です。」
 あわてて言葉を足した。そのあたりは、誤解のないようにしておきたい。現地の協力者を無下にするほど自分たちはバカではないのだから。地上支配を円滑に行うためにも協力者は必要だ。
『モチはモチ屋』という言葉もある。専門家でない者が付け焼刃の知識で専門的な物事を実行する危険性とその例も知らないわけではない。
 アルボアさんの口の面積が大きくなるのが分かった。ヒューマン種の、この表情のパターンは、呆れているのか怒っているのか、どっちなのだったか?
そんな事を考えていると・・・、彼女のほうから話してくれた。
「そんなこと、話していいのか?
 奴隷で傭兵の、このあたしに?」
 もっともな返答が帰ってきた。なるほど確かに、安易に口にすべきことではなかったかもしれない。例えこの惑星に自分たちへの対抗能力が皆無であっても。
 もっとも「ラ」である自分は、あのゲシル星人の調査隊の愚は犯さないが。
「もちろん、あなたの意も汲んでおきますので・・・。」
 一応、安心させるために言ってみた。信頼は最も大事なものだ。それは種族世界を問わず共通の価値観だ。特に契約社会である魔界では貴ばれている。
*
*
*
 ホエイは一応は司令官なだけあって、あたしのような下っ端傭兵にはまずいかない情報を色々知っていた。教えられても困るんだけど。
ていうか、あたし、これが原因で消されたりしねーだろうな?
 とりあえず、あたしは一度エルセアに戻ろうと思って歩を進めることにした。だけど、モンタズナ様のところに戻るためじゃない。グラナールはあの時、あたしを「裏切者」とか言っていた。
モンタズナ様に、そう告げ口していてもおかしくないだろう。だから、ほとぼりが冷めるまで船で渡って、ブルガンディにでも潜んでいようと思う。そして、どうやってやったのか知らないけど、
あたしの荷物も骨もホエイが魔界から回収してくれていた。骨は埋めて欲しかったけど、あのグラナールのような連中の手に渡る可能性もあった。闇の軍団にも『死霊術師(ネクロマンサー)』という
死者をもてあそぶ奴は少なくない数いた。そいつらに、前世とはいえ、あたしが好きにされるのはぞっとした。じゃあ、どうしようか?
 あたしが相談を口に出す前に、ホエイは骨をどこかに転送してくれた。たぶん、こいつの隠れ家か何かにだろう。まぁ、変な連中の手に渡るよりはマシだ。
 他にすることもないから、仕方なく歩き出してしばらくしてホエイを見ると、コイツは歩きながら何やら考えこんでいた。
「何を考えてるんだ?」
 顔を覗き込んで聞いてみる。さすがに、あたしを生贄にする考えは無いだろうけど。
「今度、総司令にどこの勢力を紹介しようかと考えてまして。」
 想像以上にとんでもないことを言い出した。『総司令』というのは、『トリカゴ』を支配する女だ。詳しい事はホエイも知らないようだけど、女性でユニコーン族という事くらいは明らかになっている。
彼女と直接会話するのは、「トリカゴ」の中でも、あまりいないらしい(ホエイは司令官なので対話可能な立場なようだ)けど・・・。
少なくとも、日常会話の類で名前を口に出す人物ではないことは確かだ。ていうか、本当にヤバイ話だと、あたしのアタマでも分かる。
「あのな、さすがに世界全部を向こうに回してまで、あんたと付き合い気はないぜ!?」
 さすがに太いクギを打ち込んでおく。あたしは自分自身でさえ生きるのに精一杯なんだ。この上で世界を敵に回すなんて、まっぴらごめんだ。
「誤解です、攻め込む先の話では、ないです、我々の協力者として、です。」
 追撃を上乗せしてくれた。正直、その答えでもあまり変わらない。・・・こいつには「機密事項」と言う言葉は無いのだろうか?
 そんなわけないし、そんな奴が司令官を務めるようなアホな勢力などいて欲しくない。この世界どころか宇宙をも牛耳ろうという大規模勢力なら、なおさらだ。
「そんなこと、話していいのか?
 奴隷で傭兵の、このあたしに?」
 思わず言った。一応、あたしは奴隷だけど、その契約書はあたしが持ってて、ご主人様のスペルネームまで知っているわけで・・・。
 主従が逆転している事に、今更あたしは気づいた。あり得ない、少なくともこのウルフレンドの常識なら。
「もちろん、あなたの意も汲んでおきますので・・・。」
 ・・・うん、こいつはアレだ。頭がおかしい奴だと思っていたけれど、ここまでとは思わなかった。
 どこの世界に自分の奴隷に世界を左右するような選択させる侵略者の手先がいるというのだろうか?
 それとも、こいつらにとってそれが「常識」なのか?
 そういえば、『大戦』の時もこいつと顔を合わせたことがあったけど、コイツの部下か弟子の補足通訳無しだと理解に困った記憶があった。
 ・・・彼らの苦労が思いやられる。
 あれから1000年以上か、エイリアンの寿命がどのくらいか知らないけれど、生きているなら元気で幸せでいて欲しい。
「あの・・・私、何かおかしいこと言いましたか?」」
「かなりな」
 さすがにズバっと言ってやった
「あう・・・」
 こいつに「常識」を教えることが、転生したての、あたしの最初の仕事になりそうだ。それに、こいつを近くにおいておけば、少なくともあたしは安全だろう。
ゆくゆくは、この生活から抜け出すこともできる足掛かりにもできるかもしれない。

 そんなことを考えていたら、何やらイメージが頭に浮かんだ。あたしはまだ希望を光を信じていて、ヒーローたちを尊敬していた純朴な村娘だったころ。
長と一緒に、拾ってきた白い小さな毛玉のような生き物の世話を・・・。
 ・・・いや、まさかな。あの毛玉と目の前のコイツは似ても似つかない。でも、何か共通する情報があったような・・・?
「エルセアに行くぞ」
 とりあえず考えを頭から振り払って、目的地を告げた。
「でしたら『スズメの御宿』がお勧めです。
 あそこは私の仲間たちが運営していますので。」
 あたしはコケた。そこは、あたしたちモンタズナ派が利用している、酒場兼任の宿の一つだ。侵略者どもの拠点とまでは知らなかった。
「あの、今度はどうしました?
 スズメ中尉が何か・・・?」
「・・・いい、宿には行かない。今はモンタズナ様と会うのはまずい。
 ブルガンディに行く。」
 手短に言っておいた。
 この先、あたしとコイツは、長い付き合いになる。これが、あたしたちのリザレクションの時代の出会いだった。
(SS本編に続く)
*
*
*
 魔王たちが堪能した後、残された女の体。饗宴が終わり放置されていたソレは、誰からも見放されていた。しかし、このまま朽ちていくはずのソレは、にわかに動き出した。
「おや、これは・・・。」
 たまたま興味本位で死体を見に来た一人の女悪魔が、それを目撃する。
 女の体の内側から、すさまじい魔力があふれ出す。やがてそれは女の体を分解し吸い尽くし、物質化を始め、一匹の巨大な蛆虫の姿に固定された。
「・・・ここは、どこ?」
 自分の居場所を問うその声が、新たな魔王種の産声だった。
「おめでとう、あなたはこのリザレクションの時代に新しく生まれた、新しい魔王よ。」
 女悪魔は蛆虫を撫でながら祝福した。たとえ相手が魔王種でも遠慮はない。
 なぜなら、彼女に比肩し得る実力者は手の指の数より少ない上に、彼女が傅く対象は父親ただ一人のみだ。ウルフレンドの死すべき種族のみならず、
悪魔たちでさえも彼女を畏怖してこう呼んだ、『魔界の王女(デーモン・プリンセス)』と。
「最初に出会ったのが私だったのは、あなたにとって最大の幸運かしら、それとも不運かしら?」
 王女は蛆虫の頭を両手で挟み、その顔を覗き込む。
「せっかくだから、あなたに名前を付けてあげるわ。『マルツゥ』という名前はいかがかしら?」
 蛆虫は、はっきりと言った。
「素敵な、名前、気に入った。」
 カタコトの共通語---おそらく母体から吸収した知識---で、彼女は呟いた。
「私も、あなたを気に入ったわ、マルツゥ。お父様に言って、あなたを育てる権利を独占するわね。」
 彼女がそうと決めたら、止められる者はいない。王女は蛆虫と共に、饗宴のあった部屋を後にした。

(おわり)

=====================================================================================
<あとがきとか解説とか>

解説:モンタズナ
SS筆者の創作ではありません、公式設定です
繰り返します、公式設定です
イラストでも筋肉ムキムキ半裸男です、この魔術師・・・(汗)

解説:グラナール
公式キャラ
モンスターメーカーノベル「リザレクション」の黒幕にして恐らくGMキャラ
分かりやすい絵に描いたような悪役
おかげでアルボアさんを手にするのに
どれだけ苦労することになったのか
本当に・・・(以下、グロンギ言語による長い愚痴により割愛)

解説:グラナールその2
モンスターメーカーノベル「リザレクション」の筆者の伏見健二先生はクトゥルフ神話関連の書物も
出されています
「ハスタール」「セレファイス」「ロード・トゥ・セレファイス」は私もハマりました///////

解説:カオニュ
名前の由来はフランスの史実「カニュ(絹織物職人)の反乱」から
アルボア(地名)は彼らを支持し「共和国」を宣言しました(史実)

解説:アルボア(地名)
ジュラ山脈に位置する農村でワインの産地として有名
穀物農業と酪農もあり、自然豊かな地域です
極度な寒さの無い冬と酷暑でない温かい夏が特徴

出身有名人にはかの「ルイ・パスツール」がおり、サン・ジュスト教会やグロリエット塔といった歴史的建造物も
特筆すべきはワイン博物館になっている16世紀の建築物である
シャトー・ペコーであってワインが好きな人なら足を運んでも損は無いと
思われ(長い話になるので割愛)
アルボア「・・・(←引いてる)」

解説:スズメの御宿
モチーフは童話「舌切り雀」、大きな葛籠の中にいるのがお化けたち
女将はスズメ(コードネーム)
「トリカゴ」の階級は中尉
旦那は奴隷商のカッコウ(コードネーム)

解説:奴隷商カッコウ
托卵を行う鳥モチーフ
お金にがめつい奴隷商

解説7:トリカゴ
「大戦」時に宇宙から来た侵略勢力
「宇宙商人」登場種族をはじめとした異星人・人外種族で構成されている組織
皮肉にも発達した文明が彼らを呼び寄せてしまいました
文明が滅んだ後も残っていたものの、反撃を食らい大損害を受け「割に合わない」と一時撤退
しかし諦めたわけではありませんでした
大戦から1000年後に活躍して来る同一人物は冷凍睡眠装置を使ったか長寿命かのどちらか
(カッコウたちは前者)

解説:ユニコーン族
モンスターメーカーでは「ハーゲン」が有名な種族
「死すべき種族」でありながら、角目当ての乱獲に遭い一時は絶滅(公式)

破滅を予見して宇宙に脱出した一族も宇宙の戦乱に巻き込まれて壊滅したはずでしたが
難を逃れていた一部が生きていました
ただ、生き延びたのは母体から離れて活動していた「争いや兵器を研究する部門」だったため
その後の宇宙の勢力図は短期間で一変する羽目に・・・
「トリカゴ」の最上位種族は彼らで、「総司令」は彼らの女王であり「トリカゴ」のトップ

解説:『マルツゥ』
新たな魔王(令嬢)
名前の由来はウジの活動で発酵させるイタリアのチーズ「カース・マルツゥ」から(実在するチーズです)

ではまた


2024年3月7日木曜日

【MMファン】リザレクション二次創作小説特設ページ【SS】

 Monster Makers' Conflict

投稿サイト:ハーメルン - SS・小説投稿サイト 様(https://syosetu.org/)

【MMSS】投稿ページ:Monster Maker ResurrectionRPG FAN SS- Monster Makers' Conflict-


上記のサイトにて不定期更新中!

感謝します(2022.04.17)

 

 X在籍時、九月姫先生より「いいね」をいただきました!

 

大変ありがとうございます!

こちらでも、誠心誠意励みます!

 

がんばれよ、本当に; 


【↓SSサンプル】